
目次
乳房にしこりを触れると、「乳がんなのではないか」と不安になる方は少なくありません。
乳房のしこりには、乳がんだけでなく、嚢胞、乳腺症、乳腺炎、線維腺腫など、良性の病変も多くあります。その中でも線維腺腫は、若い女性に比較的多くみられる良性の乳房腫瘍です。
線維腺腫は良性の腫瘍であり、多くの場合、すぐに治療が必要なものではありません。一方で、しこりを触っただけで、それが線維腺腫なのか、乳がんなのか、ほかの病変なのかを自己判断することはできません。
今回は、線維腺腫について、症状や原因、乳がんとの違い、検査、治療の必要性について解説します。
線維腺腫とは

線維腺腫は、乳房にできる代表的な良性腫瘍です。
乳腺の組織と線維性の組織が増えることでできるしこりで、10代後半から30代くらいの若い女性に比較的多くみられます。40代以降で見つかることもあります。
線維腺腫は、乳房に「ころころ動くしこり」として触れることがあります。表面が比較的なめらかで、境界がはっきりしていることもあります。
ただし、触った感触だけで線維腺腫と診断することはできません。乳房のしこりに気づいた場合には、乳腺外科で診察や画像検査を受け、良性のしこりかどうかを確認することが大切です。
なぜ線維腺腫になるの?

線維腺腫ができる明確な原因は、はっきり分かっていません。
若い女性に多くみられることから、女性ホルモンの影響を受けていると考えられています。思春期から若年成人の時期に見つかることが多く、妊娠や授乳、ホルモン環境の変化によって大きさが変化することがあります。
一方で、線維腺腫があるからといって、生活習慣が悪かった、何かをしたからできた、というものではありません。
乳房にしこりがあると不安になると思いますが、線維腺腫は比較的よくみられる良性の病変です。大切なのは、自己判断で放置せず、必要な検査で確認することです。
どのような症状が出るの?
線維腺腫では、乳房にしこりを触れることがあります。
1. 乳房のしこり
線維腺腫は、丸く、境界が比較的はっきりしたしこりとして触れることがあります。
- 乳房に丸いしこりを触れる
- しこりが比較的よく動く
- しこりの境界が分かりやすい
- 痛みはないことが多い
といった特徴があります。
ただし、しこりが動く、痛みがない、若い年齢である、というだけで良性と判断することはできません。気になるしこりがある場合には、検査で確認する必要があります。
2. 健診や超音波検査で偶然見つかる
線維腺腫は、自分ではしこりに気づかず、健診や乳房超音波検査で偶然見つかることもあります。
特に小さな線維腺腫では、自覚症状がないまま画像検査で指摘されることがあります。
「しこり」と言われると不安になる方も多いですが、画像所見から典型的な線維腺腫が疑われる場合には、すぐに治療をせず経過観察となることもあります。
3. 張りや違和感
線維腺腫そのものは痛みを伴わないことが多いですが、乳房の張りや違和感として気づく方もいます。
また、月経周期によって乳房全体が張ったり、痛みを感じたりすることがあります。その場合、線維腺腫だけでなく、乳腺症など女性ホルモンの影響による変化が関係していることもあります。
線維腺腫と乳がんの違い

線維腺腫は良性の腫瘍であり、一般的には乳がんとは別の病気です。
線維腺腫と診断されたからといって、すぐに乳がんになるというわけではありません。典型的な線維腺腫で、大きさや形に変化がない場合には、経過観察となることがあります。
一方で、乳房のしこりを触っただけで、線維腺腫と乳がんを区別することはできません。
線維腺腫は、比較的境界がはっきりしていて、丸みを帯びたしこりとしてみえることがあります。一方、乳がんでは、形が不整であったり、境界がはっきりしなかったり、周囲の組織を引き込むような所見を示すことがあります。
ただし、これはあくまで一般的な傾向です。画像検査では良性に見える病変でも、経過や大きさ、形によっては追加の確認が必要になることがあります。
重要なのは、「若いから大丈夫」「よく動くしこりだから良性」と自己判断するのではなく、乳腺専門機関で適切な評価を受けることです。
線維腺腫と葉状腫瘍

線維腺腫と似た病変として、葉状腫瘍(ようじょうしゅよう)があります。
葉状腫瘍は、線維腺腫と同じように乳房のしこりとして見つかることがあります。画像検査でも線維腺腫と似て見えることがあり、しこりが大きい場合や短期間で増大している場合には、葉状腫瘍との区別が必要になることがあります。
葉状腫瘍には良性、境界悪性、悪性があり、診断された場合には手術が検討されることがあります。
そのため、線維腺腫と思われるしこりであっても、急に大きくなる場合や、画像所見が典型的でない場合には、組織検査や専門的な判断が必要です。
検査では何が分かるの?

乳房のしこりで受診した場合には、まず問診と診察を行います。
いつからしこりに気づいたのか、大きさに変化があるか、痛みがあるか、乳頭分泌があるか、過去に乳腺の検査を受けたことがあるかなどを確認します。
そのうえで、必要に応じて画像検査を行います。
乳房超音波検査(エコー)
線維腺腫の確認には、乳房超音波検査がよく用いられます。
乳房超音波検査では、
- しこりの大きさ
- しこりの形
- 境界がはっきりしているか
- 内部の様子
- 周囲の組織との関係
などを確認します。
若い方や乳腺が発達している方でも、しこりの状態を確認しやすい検査です。
線維腺腫が疑われる場合でも、大きさや形、内部の性状によって、経過観察でよいか、組織検査が必要かを判断します。
マンモグラフィ
年齢や症状、検診歴によっては、マンモグラフィを行うこともあります。
マンモグラフィでは、しこりだけでなく、石灰化や構築の乱れなど、超音波検査だけでは分かりにくい所見を確認します。
特に40歳以上の方や、乳がん検診で異常を指摘された方では、乳房全体を確認するためにマンモグラフィが重要になることがあります。
組織検査(針生検)
画像検査で、典型的な線維腺腫と考えられる場合には、経過観察となることがあります。
一方で、
- しこりが大きい
- 短期間で大きくなっている
- 形が典型的ではない
- 葉状腫瘍などほかの病変との区別が必要
- 画像だけでは判断が難しい
といった場合には、組織検査を検討します。
組織検査は、病変の一部を採取して顕微鏡で調べる検査です。組織検査が必要と言われたからといって、乳がんが確定したという意味ではありません。診断をはっきりさせ、今後の方針を決めるために行います。
治療は必要?

線維腺腫は、多くの場合、すぐに治療や手術が必要な病変ではありません。
画像所見が典型的で、大きさに大きな変化がない場合には、経過観察となることがあります。経過観察では、一定期間ごとに乳房超音波検査などを行い、しこりの大きさや形に変化がないかを確認します。
一方で、次のような場合には、組織検査や手術を含めた対応を検討することがあります。
- しこりが大きい
- しこりが短期間で大きくなっている
- しこりの形が典型的ではない
- 葉状腫瘍などほかの病変との区別が必要
- 痛みや違和感が強い
- 見た目の変化が気になる
- ご本人の不安が強い
「線維腺腫と言われたから必ず手術が必要」というわけではありません。反対に、「良性と言われたから絶対に放置してよい」とも限りません。
年齢、しこりの大きさ、増大傾向、画像所見、組織検査の結果、ご本人の不安や希望などを総合して判断します。
このような場合は受診しましょう

以下のような場合は、線維腺腫だけでなく、乳がんや葉状腫瘍などほかの病気との区別が必要になることがあります。
- 新たなしこりを触れる
- しこりが大きくなっている
- しこりの形や硬さが変わってきた
- 痛みや違和感が強くなっている
- 乳頭から血液が出る
- 皮膚のへこみやひきつれがある
- 検診で「しこり」や「要精密検査」と言われた
- 線維腺腫と言われたが、経過観察でよいのか不安がある
自己判断せず、乳腺外科を受診することをおすすめします。
お茶の水乳腺クリニックへご相談ください

線維腺腫は、若い女性に比較的多くみられる良性の乳房腫瘍です。多くの場合はすぐに治療が必要なものではなく、経過観察となることがあります。
しかし、線維腺腫と乳がん、葉状腫瘍などは、症状や画像所見が似ることもあり、自己判断で区別することはできません。
乳房のしこりが気になる場合、あるいは検診でしこりを指摘された場合には、一度乳腺外科で確認することが大切です。
お茶の水乳腺クリニックでは、乳房のしこり、線維腺腫を指摘された方、乳がん検診で要精密検査と言われた方の診療を行っています。マンモグラフィ、乳房超音波検査、必要に応じて組織検査まで対応しております。
「乳房にしこりを触れる」「線維腺腫と言われたが心配」「経過観察でよいのか相談したい」という方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
- 日本乳癌学会 編. 乳癌診療ガイドライン 2025年版.
- 乳腺腫瘍学. 南江堂.
- NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology: Breast Cancer Screening and Diagnosis.
- American Cancer Society. Fibroadenomas of the Breast.



